【東サラ2021年度募集馬考察】パンモッレの20・ワンダフリーの20

始めに

本企画では、血統研究家としての視点から注目の一口クラブ募集馬について紹介する。

紹介馬は「私がその馬に出資したいか」を基準に選定している。「血統(配合)」が優れていることを大前提として、「募集価格」「厩舎」「生産・育成牧場」「測尺」などの要素から最終的な判断を下す。

なお、馬体関係の視覚情報については、基本的に気にしないこととしている。ウォーキング動画や1歳時点の立ち姿だけでその良し悪しを判断できるほど相馬眼が肥えておらず、下手に情報を追加するとノイズになりかねないためである。ご承知頂きたい。

今回は東京サラブレッドクラブ2021年度特別追加募集馬から、パンモッレ(Panmolle)の20ワンダフリー(Wonderfully)の20を紹介する。私自身、東京サラブレッドクラブ会員ではないが、本企画で紹介する馬は応募予定馬である。読者諸賢に於いては、考察部分について参考にしつつ、私の抽選突破のためにどうか応募を控えて頂きたい。

パンモッレ(Panmolle)の20

基本情報

父:Frankel 母父:Lawman

厩舎:鹿戸雄一(美浦) 生産:Wood Farm Stud

募集価格:5,000万円(一口12.5万円)

考察

父Frankelは現役時代英国で14戦14勝、うちGⅠ10勝。英2000ギニー(T8F)などマイルを中心に活躍したが、引退前の2戦では英インターナショナルS(T10F)・英チャンピオンS(T10F)と中距離もこなした。カルティエ賞年度代表馬に二度選出された、紛れもなく欧州最強のマイラーである。

https://www.pedigreequery.com/frankel3

↑Frankel五代血統表

Frankel自身の配合は、「父Galileo×母父Danehill」のニックス抜きでは語れない。この配合は、2011年のFrankel(英2000ギニー)、Roderic O’Connor(愛2000ギニー)、Golden Lilac(仏牝馬二冠)を皮切りに、2010年代欧州クラシックを席巻した。Danehill最大のストロングポイントである名牝Natalmaの累進(Natalma4×5×5)は言わずもがな、Buckpasser5×5でパワーを増強しつつ俊敏さも補強。更には、泣く子も黙る独の名牝Urban Seaを異系とした「4分の3ND・4分の1異系」、「中距離(父Galileo)×短距離(母父Danehill)」によって美しい血統表を作り出す。ただしFrankelの場合は、二代母Rainbow LakeもNorthern Dancerを引かないので、形としては「2分の1ND・2分の1異系」となる。

種牡馬としては、2016年に産駒デビュー。初年度から日本のソウルスターリングが阪神JFで産駒GⅠ初勝利を挙げると、僅か6年のキャリアで8ヶ国(英愛仏独UAE日豪加)産駒GⅠ制覇を果たす。その父Galileoにも言えることだが、Northern Dancer系が圧倒的シェアを誇る現代(特に欧州)に於いて、「2分の1ND・2分の1異系」の種牡馬というのは、それだけで強力な武器となる。産駒の特徴は様々で、特に本邦に於いては、ソウルスターリング(優駿牝馬)、グレナディアガーズ(朝日杯FS)、モズアスコット(フェブラリーS)とオールマイティに活躍。それぞれの母がStacelita(仏オークス)、Wavell Avenue(BCフィリー&メアスプリント)、India(米D8.5Fで重賞2勝)であることを考えると、母の競走能力や適性を素直に引き出すタイプの種牡馬と言える。

https://www.pedigreequery.com/panmolle

↑Panmolle五代血統表

母Panmolleは英国で1勝。Bahamian牝系出身。二代母Zendaは仏1000ギニー馬で、Oasis Dream(カルティエ賞最優秀スプリンター)の半姉。母PanzanellaはKingman(カルティエ賞年度代表馬)の半姉。

本馬はTattersalls October Yearling Sale Book2にて230,000ギニーで落札。母5歳時の初仔。配合としてはDanehill3×4Danzig4×5×5の濃いインブリードを抱える。マイラー(父Frankel)×中距離(母父Lawman)の配合でバランスとしてはまずまずだが、競走馬として日本で活躍するには馬力偏重の感が否めない。ただし、優秀な牝系と濃いインブリードは繁殖として非常に強力な武器となる。

過去の東京サラブレッドクラブ海外輸入牝馬はレッドヴァージン、レッドメデューサ、レッドガナドーラ、レッドファンタジア、レッドエルザの5頭。中央で勝ち上がったのはレッドヴァージン1頭のみと、競走実績は褒められたものではない。その一方で繁殖としては、レッドガナドーラを除く4頭が中央2勝以上の実績馬を輩出。特にレッドファンタジアは、産駒5頭全頭が勝ち上がり、重賞馬2頭輩出の名繁殖となっている。東サラチームの繁殖牝馬の目利きと、それに応えるに相応しい血統背景を持つ本馬は「第二のレッドファンタジア」となるポテンシャルを秘めている。

鹿戸師はエフフォーリアで久々のGⅠ制覇を果たした美浦の中堅。クラブ相性は勝馬率65.4%(17頭/26頭)と優秀で、クラブ内序列も藤沢師と双璧。クラブ馬の重賞制覇こそないものの、現役管理馬ではレッドベルディエス(OPクラス)など、上級条件でも結果を残している。

ワンダフリー(Wonderfully)の20

基本情報

父:Kingman 母父:Galileo

厩舎:友道康夫(栗東) 生産:Ballylinch Stud

募集価格:5,200万円(一口13.0万円)

考察

父Kingmanは現役時代英愛仏で8戦7勝。愛2000ギニー(T8F)から引退レースとなる仏ジャックルマロワ賞(T8F)までGⅠ4連勝を果たし、カルティエ賞年度代表馬に選出された。

https://www.pedigreequery.com/oasis+dream

↑Oasis Dream五代血統表

Kingman自身の配合は、同じBahamian牝系出身のOasis Dream(カルティエ賞最優秀スプリンター)と似通う。まずOasis Dreamの血統表を見ると、Northen Dancer3×4、Never Bend4×4、Sir Gaylord4×5の綺麗な父母相似配合となっている。そもそもGreen Desert×Dancing Braveは、Northern DancerSir Ivor≒Drone(Sir GaylordとAttica≒Tom Fool)・Fair Trialなどが共通する相似配合。そこにNever BendのクロスでGreen Desertの主要血脈を全て増幅、残る三代母が愛1000ギニー・オークス・セントレジャー全て2着のSorbusという隙の無い配合にまとめた。

https://www.pedigreequery.com/kingman4

↑Kingman五代血統表

Kingmanの場合は、Oasis Dreamの父Green Desertと母Hopeが、それぞれ二代父・二代母へ下がる形となるが、その隙間を埋めるRafhaZamindarが秀逸。ZaminderはNorthern Dancer・Secrettame(≒Sir Ivor≒Drone)で上述のGreen Desert×Dancing Braveを更に強調。その一方で、Rafhaはこれらを一切持たず、Rockefella4×4・Hyperion5×7×5×5という異系のスタミナ血脈で固めた仏オークス馬。また、Rafha(Atan)とZamindar(Gone West)の組み合わせにより、新たにMixed Marriage6×6の牝馬クロスが発生する。その結果、Nasrullah×Princequillo×Tom Foolのしなやかなスピードを主軸にしつつ、それを支えるパワーを父系から、持続力を異系の名牝から注入した「4分の3ND・4分の1異系」の名配合が完成した。

種牡馬としては、2018年に産駒デビュー。初年度産駒のPersian Kingが仏2000ギニーで産駒GⅠ初勝利を挙げると、Palace Pier(英)、Domestic Spending(米)、シュネルマイスター(日)が各国の芝マイルGⅠを制覇。デビュー4年目にして早くも世界的大流行の兆しを見せている。Kingman自身が短距離(父Invincible Spirit)×マイラー(母Zenda)の配合なので、産駒の代では中距離血統の注入がマスト。産駒GⅠ馬の母父はDylan Thomas(凱旋門賞)、Nayef(英チャンピオンS)、Street Cry(ドバイWC)、Soldier Hollow(ダルマイヤー大賞)と中距離馬が並ぶ。またMixed Marriageの増幅も成功パターンで、Persian KingはKris=Diesis4×4、シュネルマイスターはKris4×5。本邦に於いてKingman×Krisは勝馬率100.0%(4頭/4頭)、うち2頭が重賞馬(シュネルマイスター・エリザベスタワー)と抜群の成績を誇る。

https://www.pedigreequery.com/wonderfully2

↑Wonderfully五代血統表

母Wonderfullyは愛GⅢシルヴァーフラッシュS(T7F)制覇。Rafha牝系出身で、Galileo×Danehillのニックス。詳しくは前述の通り。

本馬はArqana August Yearling Saleにて280,000€で落札。母9歳時の3番仔。配合としては何よりRafha3×3、更に言えばInvincible Spirit≒Massarra2×2の濃いインブリードが目立つ。また、母父GalileoとKris4×4で、Kingmanの配合のツボもきっちり…というよりも大胆に押さえている。 マイラー(父Kingman)×中距離(母父Galileo)の配合だが、母自身の距離適性を考えると本馬もマイラーだろう。アウトサイダー血脈の名牝2頭と、A級Northern Dancer血脈を惜しげもなく注ぎ込んだ贅沢な血統表で、やはりこちらも繁殖としての期待が大きい。

友道師はマカヒキ・ワグネリアンのダービー馬2頭を始め、中長距離を中心に圧倒的な実績を誇る西の名門。しかしクラブ相性は勝馬率36.4%(4頭/11頭)と低レベル。そもそも活躍馬の殆どが個人所有馬で、「西の友道、東の国枝」と評する出資非推奨厩舎ではあるのだが…。ただし、過去管理馬の殆どが低-中価格帯(募集価格3,000万円台以下)で、初の高価格帯となったレッドジェネシス(募集価格7,000万円)は京都新聞杯制覇など活躍中。高価格帯の本馬は、傾向的にはそこまで悲観しなくても良いのかもしれない。

総評

考察を書いて改めて感じたが、非常に似通った配合の2頭を紹介した。競走馬として自信を持っての選定ではなく、その上それなりの金額になることもあり、実際に応募するかは非常に悩ましいところ。なんにせよ新規枠40口を争う大激戦になることが想定されるので、ダメ元で応募、あとは天運に任せる…というのも良いかもしれない。繁殖入りを見越した10ヶ年計画の始動となるか。

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