予想は以下記事参照。
ゲートでやや立ち遅れたテイエムスパーダが二の脚で巻き返し、ファストフォースを抑えてハナを主張。テイエムがここまで行くとは思いませんでしたが、2頭が後続をやや離して逃げ、前半32.7で入ったところまでは、ほぼ完璧なシミュレーションができたと言ってよいでしょう。
想定外だったのは、2枠の2頭とメイケイエールが思いの外主張してきたことですかね。行き脚がつかないと思っていた中距離馬とロートルの2頭が内から進出し、前走の反省を活かして33秒後半で運ぶと思っていたメイケイが33.3のハイラップで外から寄せてきたことで、ナムラクレア浜中は下げざるを得ず、想定より2列後ろのポジションに構えてしまった。あれは良くない。ダイアトニック岩田が一度キープしたポジションを奪える訳もなく、直線でインを突くには追い出しを二呼吸ほど遅らせるしかなくなり、そのロスを嫌った浜中は大外をブン回す方を選択。結果として、それよりも遥か後方からインを突いたナランフレグに先着を許している以上、これは失策と言われても文句は言えないでしょう。あの競馬で掲示板を確保できたのは、やはりこの馬の能力の高さな訳ですが、同じことは桜花賞予想の頃から言っているのでそろそろ学んでいただきたい。
メイケイエール陣営は「敗因が分からない」とのことですが、私に言わせてもらえば33.3で追走すればそらそうよというところはあって、寧ろ前走あの流れで最後一脚使えたことを不思議に思うべきなんじゃないかと。次走はマイルを33秒後半で逃げてもらいたいものですが、はてさて。
荻野極は私と同い年で、私が競馬を始めた翌年にデビュー。当時キタサンブラックでイケイケの清水久厩舎所属ということもあってかそこそこ馬質もよく、積極的な騎乗で穴をあけることも多く、乗れる若手としてチョイと目立ったもんです。しかし2018年に突然のフリー転向、喧嘩別れなのかそれまで主戦を務めたOP馬も降ろされ、騎乗数も減少。いつしかその名前を耳にすることも少なくなりました。
そんな中で、彼に訪れた転機が他でもないジャンダルムの騎乗依頼。ジャンダルムは短距離女王ビリーヴの息子ながら、うっかりホープフルSで2着になってしまった結果、春クラシックに挑み惨敗。その後も噛み合わない競馬が続き、マイル路線で燻っていました。しかし荻野極に騎乗依頼が回ってきた20年信越S、見事一発回答を決めて主戦に内定。短距離路線で好走を重ね、22年オーシャンSで、ジャンダルムとしては4年半振り、荻野極としては初となる重賞制覇を果たすに至ったわけでございます(このときは本命打ってましたね)。まぁ乗り替わり辺りから付け始めたブリンカーの効果が大きいとは思いますが、他の騎手が乗ると後手を踏んでしまうのに、鞍上荻野極の時は不思議といつも好発を決めるんですね。
そんなコンビが久々に後手を踏んだのが、前走北九州記念。好スタートを決めたものの、8番枠から内に潜り込めず、ポジションを下げたことが最後まで響き、直線では大外に振られ17着に大敗しました。今日のレースでは、同じ轍は踏まないと言わんばかりの猛スタートから3番手のベストポジションを確保。4角で逃げる2頭の間を割ると、内伸び馬場をフルに活かして後続の追撃を凌ぎ切り、鮮やかに同競走母仔制覇、人馬共にG1初制覇を成し遂げました。
『基本的に競馬は前有利』というのは紛れもない事実ですが、それを知ってか知らずか、騎手による先行意識には意外な程差があり、リーディング上位に名を連ねるような騎手は、大抵どんな馬でも最低限競馬に加わることができるポジションで運ぼうとします。G1なら尚のこと。多くのトップジョッキーたちが凱旋門賞に出払っている中で、今日の競馬ではどれくらいの騎手がそのことを考えて騎乗していたんでしょうか。「今日は流れが向かなかった」というコメントは、まぁそれはそうなんですが、勝馬が余りにも鮮やかな勝利だっただけに、前走から大きな変わり身を見せた競馬だっただけに、本当に流れだけの問題だったのか、ナムラクレアの鞍上にはもう一度考えてみて頂きたい……と愚痴って、回顧を締めくくらせていただきます。