※特に断りのない限り、データ・画像はTARGET frontier JV・JBIS Searchより引用。
【過去考察】
2026年主な新種牡馬と初年度種付概況

※初年度産駒血統登録50頭以上の種牡馬のみ掲載。
2026年JRA新種牡馬リーディング予想
◎サリオス


初年度種付料は150万円(受胎条件)。種付頭数は176頭で同期3位、血統登録数は109頭で同期3位。2年目以降は200万円(受胎条件)に増額され、頭数も高値安定。大混戦が予想される今世代の一番手は、適性面も加味して本馬とする。
血統解説
名門独Sライン出身。二代母Saldentigerinはオイロパ賞-G1/GER 2着・独オークス-G1/GER 3着などの活躍馬で、母サロミナは独オークス-G1など重賞2勝。繁殖としても優秀で、本馬の他にサラキア(府中牝馬S-G2 他)・サフィラ(阪神牝馬S-G2 他)・サリエラ(白富士S-L 他)などJRA出走産駒9頭中7頭が勝ち上がり、内5頭がOP馬という輝かしい成績を誇る。本馬は父の10世代目産駒、母8歳時の4番仔にあたる。
競走成績
「ハーツクライ×Danehill」は全妹サフィラの他、カテドラル・シャドウディーヴァ・アドマイヤミヤビなどと共通。父産駒若駒時特有の緩い後躯を補強して早熟性を高める仕掛けによって、一般的な父産駒・独Sライン馬のイメージとはかけ離れた無骨な巨漢に発現した。2歳6月初週の新馬戦を534㎏の巨体でブチ抜き、2戦目のサウジアラビアRC-G3を2歳コースレコード、暮れの朝日杯FS-G1もレースレコードで完勝。3歳春はクラシック路線に挑戦し、皐月賞・東京優駿で三冠馬コントレイルの2着に健闘した。以降もG1タイトルを重ねることは出来なかったものの、4歳時の香港マイル-G1/HKG 3着・5歳時の安田記念-G1 3着など、マイル路線の安定勢力として活躍。5歳時の毎日王冠-G2では自身3度目となるレコード勝利を収め、半姉2頭(サラキア・エスコーラ)と併せてレコードホルダー一族の名を知らしめている。
産駒展望
産駒は自身と同じく筋肉量に恵まれ、脚付以外からは父系らしさをあまり感じないタイプが多い。芝・ダートを問わず、マイル路線を中心に早期始動を期待できる。逆に言うと、その父ハーツクライへの先祖返りを期待して中長距離を目指すのは、現状無理筋に思えてしまう。自身の血統表自体は中長距離志向が強いのが難しいところで、変に中距離繁殖との配合で適性が迷子になるよりかは、短距離繁殖との配合でマイル以下に振り切ってしまう方が潔い気もする。欧州血脈の塊なので、北米血脈を取り入れてバランスを取るのはマスト。Danehill的硬肉を解すという意味でも、北米Nasrullah×Princequillo血脈は無難に相性が良さそう。自身が持たない父のニックスを再現するSeattle Slewや、「ライバルの血」を意識するUnbridled’s Song・Storm Catとの配合に期待している。
〇エフフォーリア


初年度種付料は300万円(受胎条件)。種付頭数は198頭で同期1位、血統登録数は125頭で同期1位。2年目以降は400万円(受胎条件)とこちらも増額されており、人気に陰りなし。数的有利もあり、順当に結果が出せるのでは。
血統解説
牝祖Katiesは愛1000ギニー-G1/IREを制したパワーマイラー。「ヒシ」の冠名で知られる阿部雅英オーナーの先代・雅一郎氏がファシグティプトン繁殖セールにて購入し、北米で繋養。本邦輸入産駒のヒシアマゾン(JRA賞最優秀2歳・3歳・古牝馬)らが活躍し評価を高めると、ノーザンファームが阿部氏購入以前の後継繁殖2頭(ケイティーズファースト・ホワットケイティーディド)を導入。これらからアドマイヤムーン(JRA賞年度代表馬)・スリープレスナイト(JRA賞最優秀短距離馬)が出るなど、本邦で枝葉を大きく広げている。母ケイティーズハートはJRA3勝で、本馬の他にペリファーニア(桜花賞-G1 3着)・ジョスラン(紫苑S-G2 2着)など、JRA出走産駒6頭中5頭が勝ち上がりの名繁殖。本馬は父の2世代目産駒、母9歳時の2番仔にあたる。
競走成績
2歳時にデビュー2連勝を飾るもそこまで注目度は高くなかったが、3歳初戦の共同通信杯-G3を好内容で完勝。2着ヴィクティファルス・3着シャフリヤールが次走重賞を勝利したことも後押しに、一躍クラシック主役候補に躍り出る。直行で挑んだ皐月賞-G1は雨の残る馬場の中、4角インから捌いて3馬身突き抜け完勝。無傷の4連勝でクラシックホースの称号を手にした。断然の1番人気で臨んだ東京優駿-G1はゴール前シャフリヤールとの叩き合いの末、ハナ差2着に惜敗。秋はクラシック菊花賞ではなく、対古馬の中距離路線に専念。天皇賞(秋)-G1では、前年の三冠馬コントレイル・マイル女王グランアレグリアを撃破し改めて能力を示すと、勢いそのまま続く有馬記念-G1でも、グランプリ3連覇中のクロノジェネシスら歴戦の古馬を下して優勝。グレード制導入以降、3歳馬による秋古馬二冠達成は父の父シンボリクリスエス以来史上2頭目の快挙で、JRA賞年度代表馬を受賞した。翌年は大阪杯から始動するも、外傷などの影響からか本来の走りが見られず3連敗で終了。5歳初戦の京都記念を心房細動でゴール前競走中止とし、協議の末そのままスタッドインが決定した。「エピファネイア×ハーツクライ」のアウトライン通り、長手の体型と持続するストライドが最大の武器で、【3-1-0-0】の東京中距離がベスト条件。それでいて3歳時点から極端な緩さを感じさせず、皐月賞・有馬記念を押し切った辺りからは、馬力型である牝系の影響を強く感じる。
産駒展望
胴伸びのフレームとそれに伴うストライドの大きさは産駒に共通して伝わるストロングポイント。産駒の適舞台は、自身の実績通り芝中長距離が中心となる。スタッドインが遅れた影響も考えられるが、今のところ仕上がり早の印象はあまりなく、2歳戦よりは3歳春以降に数字を上げるタイプだろう。そういった意味でも順位はサリオスに譲った。サンデーサイレンスのクロスを持つ種牡馬は(プライベート供用馬までは把握しきれていないものの)少なくとも大手スタリオン繋養馬としては本馬が初となる。今後増えてくるであろうこの手の種牡馬の先駆けとして、どんな配合が走るかは非常に興味深い。個人的にはメリットよりも近交弱性によるリスクの方が大きいと見ており、基本的には非SSクロスの配合を推奨、最低でも母の3代目以降に一本(産駒の代で5×4×4)程度が許容ラインと考える。「中長距離×中長距離」のアウトラインなので、配合相手からは短距離血脈を積極的に取り入れたいところ。真っ先に思いつくのがロードカナロア肌で、良質な非SS短距離血脈を注入しながら、「エピファネイア×キングカメハメハ」「ロードカナロア×ハーツクライ」という2つのニックスを再現。黄金配合候補の筆頭と言える。アドマイヤムーン肌を用いた「ケイティーズハート≒マイケイティーズ2×3」という意欲的な配合も、初年度産駒に多く見られた。ノーザンファームは25年種付までの3世代でディープインパクト肌との配合を相当数試しているが、前述の理由から個人的にはあまり好みではない。
▲ウィルテイクチャージ


初年度種付料は120万円(出生条件)。種付頭数は174頭で同期4位、血統登録数は88頭で同期4位。2年目こそ頭数を大きく減らしてしまったものの、3年目はダーレーの某作戦のおかげかV字回復。このまま勢いに乗りたい。
血統解説
母Take Charge LadyはスピンスターS-G1/USA連覇などG1競走3勝含む重賞8勝。繁殖としても優秀で、本馬の他にTake Charge Indy(フロリダダービー-G1/USA 他)・As Time Goes By(ビホルダーマイル-G1/USA 他)・Charming(Take Charge Brandi・Omaha Beachの母)を輩出し、13年ケンタッキー州年間最優秀繁殖牝馬を受賞している。父Unbridled’s Songは言わずと知れた大種牡馬。本馬は父の11世代目産駒、母11歳時の5番仔にあたる。二代父UnbridledはDr. Fager≒Charedi3×2、父Unbridled’s Songは五代アウトブリード。本馬はFappiano3×4で、父系目線で緊張→緩和→緊張の累代が綺麗に決まっている。
競走成績
ケンタッキーダービーの前哨戦レベルS-G2/USAで、後にプリークネスSを制する僚馬Oxbowを下して重賞初制覇。北米クラシック三冠を皆勤するも8着→7着→10着と全く勝負にならなかったが、夏競馬に入って突如覚醒。『真夏のダービー』トラヴァーズS-G1/USAでOrb(ケンタッキーダービー-G1)・Palace Malice(ベルモントS-G1)のクラシックホース2頭を破ってG1初制覇を挙げると、大一番BCクラシックではMucho Macho Manのハナ差2着に健闘。締めにクラークH-G1を勝利してG1タイトルを重ね、エクリプス賞最優秀3歳牡馬に選出された。
産駒展望
2015年よりThree Chimneys Farmでスタッドインしており、産駒は既にデビュー済。2022年には3世代目産駒There Goes HarvardがハリウッドゴールドCを制し、産駒G1初制覇を果たしている……と言えば聴こえはよいが、G1タイトルはその程度で(なんなら同レースも現在はG2に格下げされている)、北米での実績はお世辞にも一線級とは言い難い。一方で注目すべきは日本適性の高さ。北米繋養時産駒はJRAに5頭出走し4頭勝ち上がり、ヘルシャフト(伏竜S-OP)などいずれも2勝以上を挙げている。父Unbridled’s Songの本邦に於ける活躍は言わずもがな、本馬の半兄Take Charge Indyの産駒もJRA勝馬率80.0%(4/5)と高打率。「Unbridled’s Song×名牝」という配合は先輩輸入種牡馬ダンカークと共通するが、あちらがRaise a Native5×4と薄味だったのに対して、こちらは強いインブリードを持つ。絶対能力は勿論のこと、遺伝力の高さにもこちらの方が期待できそうだ。体高173㎝は本邦繋養種牡馬の中では最も高く(25年時点)、骨量豊富なフレームは産駒にもよく伝わっている印象。ディープ・ハーツ肌と併せたニックスの再現によって芝馬が出る可能性もなくはないが、そもそもその手の配合は少ないのでダートマイル~中距離が中心になるだろう。緊張→緩和の観点から、配合相手はアウトブリード気味の繁殖が望ましい。Rubiano≒Tap Your Heelsのニアリークロスを狙うTapit系との配合で、目指せフェブラリーS。
★ホットロッドチャーリー


初年度種付料は200万円(受胎条件)。種付頭数は133頭で同期6位、血統登録数は80頭で同期5位。2年目以降は150万円(受胎条件)に下がっており、頭数も100頭を割って伸び悩み中。産駒の活躍で巻き返したいところ。
血統解説
母Indian MissはLive Lively(ダヴォナデイルS-G2/USA)の半姉。現役時代は入着止まりも、本馬とその半兄Mitole(エクリプス賞最優秀短距離馬/北米1stシーズンリーディングサイアー)を輩出し、21年ケンタッキー州年間最優秀繁殖牝馬を受賞している。父Oxbowは前述ウィルテイクチャージと同期の僚馬で、プリークネスS-G1/USA優勝。本馬は父の4世代目産駒、母9歳時の5番仔にあたる。三代母が五代アウトブリード、二代母がMr. Prospector3×4。そこに五代アウトブリードのIndian Charlieを配してインブリードが薄めの母Indian Missに、本馬はDeputy Minister3×5。緩和→緊張→緩和→緊張の累代は教科書通りと言える。
競走成績
2歳7月のデビューから初勝利に4戦を要するも、14頭立最低人気で挑んだBCジュヴェナイルではEssential Qualityに3/4馬身差まで迫る2着で波瀾を演出。3歳3月のルイジアナダービー-G2/USAをトラックレコードで制して重賞初制覇を果たすと、ケンタッキーダービー3位入線(メディーナスピリットが薬物検査陽性で失格となり1年越しに繰上2着)、ベルモントS2着と、クラシック路線で活躍した。3歳7月のハスケルSでは1位入線も、斜行で最下位降着(ケンタッキーダービーと同じくMandalounが繰上優勝)。続くペンシルヴァニアダービー-G1/USAでは、前走落馬させたMidnight Bourbonを4角で外に弾き飛ばしながらも審議なく2馬身差で完勝し、念願のG1初制覇を果たした。明け4歳春には中東遠征を敢行。前哨戦のアルマクトゥームチャレンジR2-G2/UAEを圧勝し、ドバイWC-G1でも2着と健闘した(3着チュウワウィザード)。全体にNasrullah×Princequillo血脈が強いためか大箱コースの方がレース振りが良く、惰性でズブズブ伸びてくる末脚はTizamazing=Tiznow的。本国での勝ち切れなさはこの辺りの影響を感じる。
産駒展望
本馬自身、北米の一流馬としてはかなり線が細く、歩きも良く言えばしなやか、悪く言えばクタクタ。産駒に関しても似たタイプが多く、競走実績に反して芝馬も一定数出してくるのでは。ディープ肌やUnbridled’s Song系と併せてIncantationを弄れば、芝大箱マイラーを出せる素養を感じる。Good Example≒War Relic≒Eight Thirty血脈自体は豊富に抱えているので、フジキセキ・Storm Catなどでこれを継続すればセオリー通りダートマイル~中距離型に出そう。前述の累代を考えるとアウトブリード気味の配合の方が好ましい。効果のほどは何とも言えないが、キタサンブラック肌との配合でTizlyの牝馬クロスが発生する点にも注目。
その他




以下、△カラヴァッジオ・△ジャンダルム・△チュウワウィザード・△マカヒキまで。特に注目しているのはカラヴァッジオで、競走馬としての実績は勿論のこと、Coolmore繋養時の産駒にPorta Fortuna(コロネーションS-G1/GBなどG1競走4勝)やアグリ(阪急杯-G3 他)など、種牡馬としてのポテンシャルも証明済。初年度は種付延べ頭数に対する血統登録率が僅か35%(45/128)と芳しくない数字で心配されていたが、2世代目以降は多少だが改善傾向にある様子。長い目で見てあげたい芝短距離の有力株。
種付料が示す通り小粒な印象は否めない世代だが、予想を裏切る大活躍に期待。