※各種データは2025.12.31現在に更新。
※特に断りのない限り、データ・画像はTARGET frontier JV・JBIS Searchより引用。
基本情報
繫養:社台スタリオンステーション(2016-)
生年:2010年 生産:(株)ノースヒルズ
競走成績
JPN:12戦6勝 FR:2戦1勝
2013年度 JRA最優秀3歳牡馬
2013 東京優駿-G1(東京芝2400m)1着
2013 京都新聞杯-G2(京都芝2200m)1着
2013 ニエル賞-G2(FR/ロンシャン芝2400m)1着
2014 産経大阪杯-G2(阪神芝2000m)1着
2013 毎日杯-G3(阪神芝1800m)1着
2015 産経大阪杯-G2(阪神芝2000m)2着
2015 京都記念-G2(京都芝2200m)3着
2012 ラジオNIKKEI杯2歳S-G3(阪神芝2000m)3着
JRA産駒成績
2019年度 JRAファーストシーズンリーディングサイアー
2023年度 JRA2歳リーディングサイアー
2024年度 JRAリーディングサイアー・2歳リーディングサイアー
2025年度 JRAリーディングサイアー
世代別

年次別

所感
二代母Pacific Princessはデラウエアオークス-G1/USAを制した北米の名牝。パシフィカス(ビワハヤヒデ・ナリタブライアンの母)のラインをはじめ、牝祖として本邦で一大勢力を築いた。母キャットクイルは繁殖として優秀で、中央出走産駒6頭中5頭が勝ち上がり。本馬の他にファレノプシスやSunday Break(ピーターパンS-G2/USA)を輩出している。本馬は父の3世代目産駒、母20歳時の8番仔にあたる。
「ディープインパクト×母父Storm Cat」は、本馬の他にラヴズオンリーユー=リアルスティールなどG1馬9頭を輩出した黄金配合。Sir Ivor≒Terlinguaによって「Nasrullah×Princequillo」血脈のしなやかさを最大限に引き出す。また、「ディープインパクト系種牡馬×Pacific Princess牝系」は、本馬の他にラストインパクト・モンドインテロ・ゼーヴィント・セダブリランテスと4頭の重賞馬を輩出。Donatello・Hyperion≒All Moon Shine・Fair Trial・Dark Ronaldなどのクロスによって、Burghclere的スタミナを増幅している。これら2つのニックスに加え、Damascus的なフィジカルの強さも発現し、中長距離の大箱持続戦に於いて高いパフォーマンスを発揮した。明け4歳初戦の大阪杯では馬体重500㎏までパンプアップ。古馬になってからはディープインパクト的しなやかさよりも、母系に抱える北米血脈の主張が強くなっていたと考えられる。
種牡馬としては、芝/ダート/短距離/長距離と配合によって打ち分けられる万能型。大物が芝王道路線に偏った父ディープインパクトよりも、幅広いジャンルで広がりを見せた母父Storm Catのイメージが近い。競走馬時代から同期エピファネイアとのライバル関係が続いており、G1級優勝馬はキズナ5頭に対してエピファネイア7頭と後れを取っているものの、重賞馬はキズナ33頭に対してエピファネイア18頭と大きくリード。総合力の求められるリーディング争いでも常に上位で安定しており、2024年度・2025年度とJRAリーディングサイアーを2年連続で勝ち取った。
また、ディープインパクト後継らしくフィリーサイアー傾向が強いのも特徴。前述の「ディープインパクト系種牡馬×Pacific Princess牝系」の活躍馬が牡馬ばかりであるように、Pacific Princess的資質は牝馬に伝わりにくく、牡馬に対して強く遺伝されると考えられる。キズナ産駒に関しても、牡馬はワンペース持続型≒Pacific Princessらしさの強く出たタイプが多く、クラシック路線というよりは非主流条件(内回り・ダート・長距離など)に適性が偏るため、これがこの傾向を助長させているとも捉えられるだろう。
2016年より社台SSにスタッドインしたが、父ディープインパクトが現役バリバリの時期かつノースヒルズ生産の外様種牡馬ということもあり、初期の配合相手は日高の繁殖が中心だった。しかし、そんな初年度産駒が期待以上の大活躍。ディープインパクトの急死(2019年)も重なり、供用5年目にあたる2020年以降社台グループからの評価が急上昇している。同郷同父コントレイルのスタッドイン(2022年)により種付頭数は多少落ち着き始めたが、前述の供用5年目世代が2024年クラシック路線で大活躍し再ブレイク。2025年からは大台の2,000万円に到達し、ディープインパクト後継筆頭の地位は当面の間揺るぎそうにない。
初期G1馬のアカイイト・ソングラインは共に母父シンボリクリスエス。シンボリクリスエスはKris S.やSeattle Slewといった「Nasrullah×Princequillo」血脈を内包するため、ディープインパクトと好相性。また、Storm Catとの組み合わせでは、Nasrullah×Princequillo・Crimson Satan・Tom Fool≒First Rose・Eight Thirtyなどが共通。ロードカナロア・リアルスティールなど、他のStorm Cat内包種牡馬とも軒並み好相性となっている。シンボリクリスエスはNorthern Dancerを引かないため、母父に置くことで「3/4ND・1/4異系」の好形になるのも成功要因の一つだろう。「ライバル(エピファネイア)の血」を取り込んだ配合である点も示唆に富んでいる。ソングラインはMachiavellian、アカイイトはMiswakiと、肌に入って優秀なスピード・機動力を伝える血を母系に抱えることで、このニックスをより強調させている。



産駒初の牡馬G1馬かつ初のクラシックホースであるジャスティンミラノは、母父Exceed And Excelを経由してLomondを内包する。これはファインルージュやライトバック(同母父)と共通し、抜群の長打力を誇る配合。Lomondは前述シンボリクリスエスのポイントとして挙げたSeattle Slewの半弟。その母My Charmerは、「Nasrullah×Princequillo」血脈のPoker産駒かつStriking=Busher3×3を持つ名繁殖だ。ジャスティンミラノの母マーゴットディドはTom Fool6×5で、二代母Special DancerはSir Gaylord4×3。キズナ牡馬らしからぬしなやかな体質は、Darshaanの影響も感じさせる。
以上より、キズナ産駒でG1級を狙うには、ディープインパクト×Storm Cat≒良質な「Nasrullah×Princequillo×Tom Fool」血脈の累進によって、しなやかさや軽快なスピードの要素を表面化させることが重要であると考える。キングヘイローやGone Westなどと相性が良いことも、同様の理屈で説明ができる。


当初は「Storm Catクロスは力馬っぽさが過剰に発現するため好ましくない」としており、事実低調な成績が続いたが、近年はダート・短距離路線に活路を見出し良化傾向。特にHennessyを経由するラインは高打率であり、このパターンに関しては芝中距離馬が多い。これはBurghclere≒Urbinella(Donatello・Aurora・Fair Trial・Asterusが共通)による、上述の「ディープインパクト×Pacific Pricess」的スタミナ要素の累進に理由を求められる。
所謂コントレイル配合を再現するUnbrided’s Songとの組み合わせも当然優秀だが、ナチュラルライズ・ショウナンラプンタを筆頭に、Storm Catクロスを併せ持つ方が何故か数字は良く、ディープインパクト用の繁殖が割とそのまま機能している。


Deputy Ministerを用いて、Storm Catの「War Relic≒Eight Thirty≒Good Example」血脈を力馬っぽく弄る配合も単純ながら侮れず、ダブルハートボンド・クイーンズウォーク・テリオスベルなど多くの活躍馬が出ている。産駒ダートG1級優勝馬2頭に共通するのは、母系が軽薄な北米Mr. Prospector系主体に構成されている点。ハナからダート路線を目指すのであれば、「母系の重厚感」的要素は案外不要なのかもしれない。


