種牡馬キズナを考える【2024年最新版】

※各種データは2023.12.31現在に更新。

※特に断りのない限り、データ・画像はTARGET frontier JV・JBIS Searchより引用。

基本情報

繫養:社台スタリオンステーション(2016-)

生年:2010年 生産:(株)ノースヒルズ

競走成績

JPN:12戦6勝 FR:2戦1勝

2013年度 JRA最優秀3歳牡馬

2013 G1-東京優駿(東京芝2400m)1着

2013 G2-京都新聞杯(京都芝2200m)1着

2013 G2-ニエル賞(FR/ロンシャン芝2400m)1着

2014 G2-産経大阪杯(阪神芝2000m)1着

2013 G3-毎日杯(阪神芝1800m)1着

2015 G2-産経大阪杯(阪神芝2000m)2着

2015 G2-京都記念(京都芝2200m)3着

2012 G3-ラジオNIKKEI杯2歳S(阪神芝2000m)3着

種付状況

JRA産駒成績

2019年度 JRAファーストシーズンリーディングサイアー

2023年度 JRA2歳リーディングサイアー

所感

 二代母Pacific PrincessはG1-デラウエアオークス(USA)を制した北米の名牝。パシフィカス(ビワハヤヒデ・ナリタブライアンの母)のラインをはじめ、牝祖として本邦で一大勢力を築いた。母キャットクイルは繁殖として優秀で、中央出走産駒6頭中5頭勝ち上がり。本馬の他にファレノプシス(G1-桜花賞 他)やSunday Break(G2-ピーターパンS/USA)を輩出している。本馬は父の3世代目産駒、母20歳時の8番仔にあたる。

 ディープインパクト×Storm Catは、本馬の他にコントレイルやラヴズオンリーユーなどG1馬11頭を輩出した黄金配合。Sir Ivor≒Terlinguaによって『Nasrullah×Princequillo血脈』のしなやかさを最大限に引き出す。また、ディープインパクト(後継含む)×Pacific Princess牝系は、本馬の他にラストインパクト・モンドインテロ・ゼーヴィント・セダブリランテスと4頭の重賞馬を輩出。Donatello・Hyperion≒All Moon Shine・Fair Trial・Dark Ronaldなどのクロスによって、Burghclere的スタミナを増幅している。これら2つのニックスに加え、Damascus的なフィジカルの強さも発現し、中長距離の大箱持続戦に於いて高いパフォーマンスを発揮した。明け4歳初戦の大阪杯以降は馬体重500㎏までパンプアップ。古馬になってからはディープインパクト的しなやかさが薄れ、母系に抱える北米血脈の主張が強くなっていたと考えられる。

Sir Gaylord≒Secretariat・Sir Gallahad・Menow≒Atheniaが共通。

 芝/ダート/短距離/長距離と、配合によって幅広い適性に打ち分けられる万能型の種牡馬。大物が芝王道路線に偏った父ディープインパクトよりも、幅広いジャンルで広がりを見せた母父Storm Catのイメージが近いか。

 現時点での産駒G1馬2頭は牝馬であり、父同様にフィリーサイアーの傾向が多少見られる。前述のディープインパクト(後継含む)×Pacific Princess牝系の活躍馬は牡馬ばかりで、牝馬からは全く活躍馬が出ていない(そもそも頭数が少ないこともあるが)。要するに、Pacific Princess的資質は牝馬に伝わりにくく、牡馬に対して強く遺伝される傾向が見られている。そのためかキズナ産駒に関しても、牡馬はワンペースの持続型が多く、活躍の舞台が非主流条件(内回り・ダートなど)に傾く。これがフィリーサイアー傾向を助長させているとも考えられる。

ディープインパクト系×Pacific Princess牝系一覧。明らかに牡馬優勢。

 父ディープインパクトが現役バリバリの最強種牡馬として君臨している時期に、ノースヒルズ生産の外様種牡馬として社台SSにスタッドイン。そのため初期の配合相手は、社台グループの良血ではなく日高の繁殖が中心だった。しかし、そんな初年度産駒が2歳夏から3歳春にかけて想定以上の大活躍。さらにディープインパクトの急死も重なり、2020年以降、社台グループからの評価が急上昇している。同郷コントレイルのスタッドインにより種付頭数は多少落ち着きはじめたが、ディープインパクト後継筆頭の地位は当面の間揺るぎそうにない。

初期の活躍馬は日高の繁殖が中心。ノースヒルズの愛を感じる。

 産駒G1馬2頭(アカイイト・ソングライン)は、共に母父シンボリクリスエス。シンボリクリスエスはKris S.やSeattle Slewといった有力なNasrullah×Princequillo血脈を内包するので、ディープインパクトと組み合わせることでしなやかさを増幅する。また、Storm Catとの間でも、Nasrullah×Princequillo・Crimson Satan・Tom Fool≒First Rose・Eight Thirtyなどが共通する組み合わせとなる。これら3血脈による『Nasrullah×Princequillo血脈』の累進で、しなやかさとスピードを強力に増幅する配合となっている。シンボリクリスエスはNorthern Dancerを引かないので、『3/4ND・1/4異系』の形になりやすいのも成功要因の一つだろう。『ライバルの血』を取り込んだ配合である点も示唆に富んでいる。シンボリクリスエスに限らず、キングヘイローGone Westなどの『Nasrullah×Princequillo×Tom Fool血脈』を用いて、Storm Catを軽いスピードの方面に振ることが配合のポイント。

シンボリクリスエスは、競走馬としても種牡馬としてもライバル関係にあるエピファネイアの父。

 また、父ディープインパクトとニックスの関係にあった、Unbridled’s Song(=アジアンミーティア)やフレンチデピュティ~クロフネなども、引き続き相性が良い。ただしこの2血脈に関しては北米パワーの影響が強いため、アベレージは短距離やダートに偏りがちになっている。

ディープインパクトのこのニックスでの代表産駒は芝馬ばかりだが、キズナの場合は短距離やダートに偏る。

 一方でStorm Catの直接クロスは、多少良化傾向が見られるものの低調な成績。走ったとしても、ハピやローウェルなどダート的馬力の方面に振れ過ぎる。このクロスはキズナ産駒に限らず、本邦に於いては結果が出ていないのが現状。真価を発揮するには、まだ世代が近過ぎるか。

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