※各種データは2024.07.14現在に更新。
※特に断りのない限り、データ・画像はTARGET frontier JV・JBIS Searchより引用。
基本情報
繫養:社台スタリオンステーション(2016-)
生年:2010年 生産:(株)ノースヒルズ
競走成績
JPN:12戦6勝 FR:2戦1勝
2013年度 JRA最優秀3歳牡馬
2013 G1-東京優駿(東京芝2400m)1着
2013 G2-京都新聞杯(京都芝2200m)1着
2013 G2-ニエル賞(FR/ロンシャン芝2400m)1着
2014 G2-産経大阪杯(阪神芝2000m)1着
2013 G3-毎日杯(阪神芝1800m)1着
2015 G2-産経大阪杯(阪神芝2000m)2着
2015 G2-京都記念(京都芝2200m)3着
2012 G3-ラジオNIKKEI杯2歳S(阪神芝2000m)3着
種付状況
JRA産駒成績
2019年度 JRAファーストシーズンリーディングサイアー
2023年度 JRA2歳リーディングサイアー
所感
二代母Pacific PrincessはG1-デラウエアオークス(USA)を制した北米の名牝。パシフィカス(ビワハヤヒデ・ナリタブライアンの母)のラインをはじめ、牝祖として本邦で一大勢力を築いた。母キャットクイルは繁殖として優秀で、中央出走産駒6頭中5頭が勝ち上がり。本馬の他にファレノプシス(G1-桜花賞 他)やSunday Break(G2-ピーターパンS/USA)を輩出している。本馬は父の3世代目産駒、母20歳時の8番仔にあたる。
「ディープインパクト×母父Storm Cat」は、本馬の他にラヴズオンリーユー=リアルスティールなどG1馬9頭を輩出した黄金配合。Sir Ivor≒Terlinguaによって『Nasrullah×Princequillo血脈』のしなやかさを最大限に引き出す。また、「ディープインパクト系種牡馬×Pacific Princess牝系」は、本馬の他にラストインパクト・モンドインテロ・ゼーヴィント・セダブリランテスと4頭の重賞馬を輩出。Donatello・Hyperion≒All Moon Shine・Fair Trial・Dark Ronaldなどのクロスによって、Burghclere的スタミナを増幅している。これら2つのニックスに加え、Damascus的なフィジカルの強さも発現し、中長距離の大箱持続戦に於いて高いパフォーマンスを発揮した。明け4歳初戦の大阪杯では馬体重500㎏までパンプアップ。古馬になってからはディープインパクト的しなやかさよりも、母系に抱える北米血脈の主張が強くなっていたと考えられる。
Sir Gaylord≒Secretariat・Menow≒Athenia・Sir Gallahadなどが共通。
種牡馬としては、芝/ダート/短距離/長距離と配合によって幅広い適性に打ち分けられる万能型。大物が芝王道路線に偏った父ディープインパクトよりも、幅広いジャンルで広がりを見せた母父Storm Catのイメージが近い。また、フィリーサイアーの傾向が強いのも特徴。前述の「ディープインパクト系種牡馬×Pacific Princess牝系」の活躍馬が牡馬ばかりであるように、Pacific Princess的資質は牝馬に伝わりにくく、牡馬に対して強く遺伝されると考えられる。キズナ産駒に関しても、牡馬はワンペース持続型≒Pacific Princessらしさの強く出たタイプが多く、クラシック路線というよりは非主流条件(内回り・ダート・長距離など)に適性が偏るため、これがフィリーサイアー傾向を助長させているとも捉えられるだろう。
2016年より社台SSにスタッドインしたが、父ディープインパクトが現役バリバリの時期かつノースヒルズ生産の外様種牡馬ということもあり、初期の配合相手は日高の繁殖が中心だった。しかし、そんな初年度産駒が期待以上の大活躍。ディープインパクトの急死(2019年)も重なり、供用5年目にあたる2020年以降社台グループからの評価が急上昇している。同郷同父コントレイルのスタッドイン(2022年)により種付頭数は多少落ち着き始めたが、前述の供用5年目世代が2024年クラシック路線で大活躍し再ブレイク。ディープインパクト後継筆頭の地位は当面の間揺るぎそうにない。
産駒G1馬3頭中2頭は共に母父シンボリクリスエス。シンボリクリスエスはKris S.やSeattle Slewといった『Nasrullah×Princequillo血脈』を内包するため、ディープインパクトと好相性。また、Storm Catとの組み合わせでは、Nasrullah×Princequillo・Crimson Satan・Tom Fool≒First Rose・Eight Thirtyなどが共通。ロードカナロア・リアルスティールなど、他のStorm Cat内包種牡馬とも軒並み好相性となっている。シンボリクリスエスはNorthern Dancerを引かないため、母父に置くことで『3/4ND・1/4異系』の好形になるのも成功要因の一つ。『ライバル(エピファネイア)の血』を取り込んだ配合である点も示唆に富んでいる。ソングラインはMachiavellian、アカイイトはMiswakiと、肌に入って優秀なスピード・機動力を伝える血を母系に抱えることで、このニックスをより強調させている。
産駒初の牡馬G1馬かつ初のクラシックホースであるジャスティンミラノは、母父Exceed And Excelを経由してLomondを内包する。これはファインルージュやライトバック(同母父)と共通し、抜群の好相性を誇る。Lomondは前述シンボリクリスエスのポイントとして挙げたSeattle Slewの半弟。その母My Charmerは、『Nasrullah×Princequillo血脈』のPoker産駒かつStriking=Busher3×3を持つ名繁殖だ。ジャスティンミラノの母マーゴットディドはTom Fool6×5で、二代母Special DancerはSir Gaylord4×3。キズナ牡馬らしからぬしなやかな体質は、Darshaanの影響も感じさせる。
以上より、キズナ産駒でG1級を狙うには、ディープインパクト×Storm Cat≒良質な『Nasrullah×Princequillo×Tom Fool血脈』の累進によって、しなやかさや軽快なスピードの要素を表面化させることが重要であると考える。キングヘイローやGone Westなどと相性が良いことも、同様の理屈で説明ができる。
Storm Catの直接クロスはこれまで低調な成績が続いたが、近年良化傾向が見られる。特にHennessyを経由するラインは高打率であり、意外なほど芝馬が多い。当初は「Storm Catの直接クロスは力馬っぽさが過剰に発現するため好ましくない」としていたが、これだけを理由に敬遠する必要はなくなったのかもしれない。