【昨年版】
2025年主な新種牡馬と初年度種付概況
※初年度産駒血統登録50頭以上の種牡馬のみ掲載。
2025年JRA新種牡馬リーディング予想
◎コントレイル
初年度種付料は1,200万円(受胎条件)で同期1位。血統登録数も130頭で同期1位。今世代では質・量ともに抜けた厚遇を受けており、新種牡馬リーディングは当確とみた。供用3シーズン目の昨年も人気は衰え知らず、各セールでも高額落札連発のディープインパクト後継最有力候補が、満を持して産駒デビューを迎える。
血統解説
Le Troienneに遡る名牝系出身。二代母FolkloreはG1-BCジュヴェナイルフィリーズなど重賞3勝のエクリプス賞最優秀2歳牝馬で、近親Essential Quality(エクリプス賞最優秀2歳牡馬・3歳牡馬)など、近い代に於いても活力充分の枝となっている。母ロードクロサイトはJRA未勝利も繁殖として優秀で、JRA出走産駒5頭中4頭が勝ち上がり、内3頭が2勝以上を挙げている。本馬は父の10世代目産駒、母7歳時の3番仔にあたる。
「ディープインパクト×Unbridled’s Song」はダノンプラチナなど、「ディープインパクト×Storm Cat」はキズナなどと共通する言わずと知れたニックス。「ディープインパクト×Tiznow」は本馬の他に大物不在も、JRA出走10頭全頭勝ち上がりという驚異の打率を誇る。Unbridled’s Song・Tiznowとの間では「Sir Ivor≒Incantation≒Cequillo」(Princequillo・Mahmoud・Man o’War・Marguerite de Valois=Bull Dog=Sir Gallahad)、Storm Catとの間では「Sir Ivor≒Terlingua」(Sir Gaylord≒Secretariat・Sir Gallahad・Menow≒Athenia)のニアリークロスが発生。加えて母ロードクロサイトがFappiano(三代母Cequillo)3×4・Incantation4×5を抱えており、父ディープインパクトのしなやかさとスピードの核であるSir Ivorを幾重にも増幅しながら、弱点である非力さを北米血脈で補う配合型となっている。父と同じく無敗でのクラシック三冠達成・ラストランでのG1-ジャパンC制覇など、中長距離を主戦場としたが、配合から考えられる適性は1800mベストの長めマイラー。スピードの絶対値の高さと柔軟な体質、そして陣営の高い育成力がこの実績を作り上げたと考える。
産駒展望
産駒は父ディープインパクトや自身に似た薄手のタイプと、母ロードクロサイトや本馬の兄弟に似たゴツゴツしたタイプに二極化する印象。前者の方が大物を出す可能性は高いと思われるが、いずれにも手先の軽さはよく伝わっており、一定のアベレージは出るだろう。自身が五代アウトブリードかつ比較的Northern Dancer血脈が薄いため、配合相手の受け口は広い。芝クラシックを意識するのであれば、「≒Sir Ivor」血脈クロスを継続しつつ、欧州血脈を用いて中長距離への揺り戻しを狙うのがセオリーか。北米繁殖との組み合わせでは力馬っぽく出たり短めに出たりする可能性が高く、そういった配合からクラシックホースが出るとすれば、牡馬ではなく牝馬だろう。父の成功配合を取り入れる場合、Storm Catとの相性も踏まえ、Gone West辺りが有力な選択肢となる。初年度産駒に多く見られる、Quiet American・Cahill Roadを用いたUnbridled’s Song弄りも面白い。今のところ本邦では大物の出ないStorm Catクロスに関しても、代を重ねた本馬辺りから結果が出始めるのでは。
〇インディチャンプ
初年度種付料は120万円(受胎条件)で同期9位タイ。血統登録数は67頭で同期8位。受胎率がイマイチで種付頭数の割に数字はやや苦しいが、血統的ポテンシャルと産駒の出来の良さから攻めの対抗評価とする。
血統解説
二代母トキオリアリティーはリアルインパクト・ネオリアリズム・アイルラヴァゲインなどを輩出した名繁殖。母ウィルパワーはJRA4勝で、本馬の他にアウィルアウェイなどJRA出走産駒4頭中3頭勝ち上がり、内全頭が3勝以上とこちらも名繁殖。本馬は父の13世代目産駒、母8歳時の2番仔にあたる。
ステイゴールド×キングカメハメハなので「Nasrullah×Hyperion」血脈の中距離型というアウトラインだが、最も強く発現したのは、残る1/4にあたる二代母トキオリアリティー。Northern Dancer~Nearco血脈を一切持たず、「Eight Thirty≒War Relic4×(5×5)」による『3/4北米(Man o’War)・1/4異系(Hyperion)』という好配合を持つ硬質スプリンターである。ステイゴールド牡駒の多くは中長距離で活躍したが、本馬はこの牝系譲りの北米パワーピッチが強いマイラーに発現した。3歳春のG1には間に合わなかったものの、条件戦を着実に勝ち上がり、3歳暮れにOP入り。勢いそのまま、4歳で春秋マイルG1制覇を果たした。6歳暮れの引退まで大きく衰えることなく一線級で戦い抜いた息の長い活躍も、この牝系らしさと言える。
産駒展望
産駒にもトキオリアリティーらしさがよく伝わっている印象で、全身の各パーツが太く詰まった短距離体型が多く、適性はマイル以下に偏るだろう。自身が五代アウトブリードなので、クロスのうるさい繁殖と合わせやすい点が優秀。しなやかに斬れるタイプは殆ど出そうにないので、「≒Halo」血脈や「Lady Angela~Pretty Polly」血脈を用いて、先行して粘り込む競馬に特化させるのが安牌か。大枠としては、所謂ダイワメジャー黄金配合がそのまま流用できそうな印象を受ける。
▲ダノンキングリー
初年度種付料は250万円(受胎条件)で同期4位タイ。血統登録数は44頭で同期12位。こちらも数字的には流石に厳しいのだが、血統的ポテンシャルの高さと産駒の出来の良さから単穴評価とする。
血統解説
二代母CaressingはG1-BCジュヴェナイルフィリーズなど重賞3勝のエクリプス賞最優秀2歳牝馬。母マイグッドネスはWest Coast(G1-トラヴァーズS 他)の半姉で、競走馬としては揮わなかったが繁殖として優秀。本馬の他にダノンレジェンド・ダノングッドなど、JRA出走産駒8頭中6頭が勝ち上がり、その全頭が2勝以上を挙げている。本馬は父の9世代目産駒、母11歳時の6番仔にあたる。
「ディープインパクト×母父Storm Cat」は、本馬の他にキズナ・ラヴズオンリーユー=リアルスティールなどG1馬9頭を輩出した黄金配合で、「Sir Ivor≒Terlingua」によって「Nasrullah×Princequillo」血脈のしなやかさを最大限に引き出す。三代母Lovin TouchがRoyal Charger≒Nasrullah3×3・Your Hostess=My Host3×3という攻めた配合で、この牝系由来の北米パワースピードをベースに、高速巡行型の長めマイラーとして発現した。父ディープインパクトや半兄ダノンレジェンドらと同様、馬格には恵まれなかったものの、ハイレベルな19年クラシック世代の主役級として早期から活躍。5歳時のG1-安田記念では、最強マイラーグランアレグリアなど並み居る強豪G1馬相手に、鮮やかな末脚で大金星を挙げた。
産駒展望
産駒に関してもサイズ不足は否めないが、体質や動きの良さは目立つ。初年度から右肩上がりの種付頭数は、産駒の出来の良さを示す一番のバロメータだろう。コンフォメーション的には何とも言えないが、自身の兄弟の適性やこれまでのディープインパクト後継種牡馬の成績を考えると、ダートをこなす産駒(特に牡馬)が出てきても全く不思議ない。特にFrench Deputy~Deputy Ministerとの配合では馬力型に振れる可能性が高いのでは。同じアウトラインであるキズナの成功配合をなぞれば大きく外すことはないと見て、まずは「Nasrullah×Princequillo×Tom Fool」血脈の継続を意識したい。
★クリソベリル
初年度種付料は300万円(受胎条件)で同期3位。血統登録数は112頭で同期2位。JRA新種牡馬リーディングに於ける内国産ダート馬は非常に肩身が狭く、過去10年で最も順位が高かったのは、低レベル世代18年ベルシャザールの4位。普通に考えれば上位入着は厳しいが、数的有利と最低限のリスペクトを込めて、惑星評価とする。
血統解説
二代母キャサリーンパーはG3-オマール賞 2着など仏マイル~中距離路線で活躍。母クリソプレーズはアロンダイトの全妹で、自身はJRA3勝。繁殖としても優秀で、本馬の他にクリソライト・マリアライト・リアファルなど、芝・ダート問わず活躍馬を輩出。馬力とスタミナを堅実に伝え、JRA出走産駒8頭中7頭が勝ち上がり、その全頭が2勝以上を挙げている。本馬は父の12世代目産駒、母14歳時の7番仔にあたる。
父ゴールドアリュールは大種牡馬サンデーサイレンスの産駒として唯一のダートG1馬。主としてその母父Nureyevの馬力をダート適性に転化していたと考えられる。本馬は母父に稀代の近交馬エルコンドルパサーを迎え、「Nureyev≒Sadler’s Wells 3×(5×4)」でこれを強力に増幅。「Never Bend≒Bold Reason 6×(6×4)」も加えて、欧風馬力血脈で固めた配合となっている。デビューから無傷の6連勝でG1-チャンピオンズCを制し、3歳にして名実ともに日本のダートチャンピオンとなった。4歳時にはJpn1-帝王賞・Jpn1-JBCクラシックで『大井の帝王』オメガパフュームを完封。500㎏を優に超えるスケールの大きな馬体とストライドは大箱向きで、3戦3勝の大井2000mがベストパフォーマンスの舞台だった。
産駒展望
遺伝力が強く、産駒は総じて馬格に恵まれたタイプが多い。フィジカルに優れる反面、やや器用さに欠ける点もよく伝えており、適性は大箱ダート中距離が中心となるだろう。血統的には、時計の掛かる条件であれば芝にも対応できる素養はあり、洋芝(特に札幌)中長距離で穴パターンとして注目したい。自身が欧血中心の重厚な血統構成なので、軽快スピード型の北米血脈を取り込んでバランスを取りたい。Special血脈に関しては自身の代で弄り過ぎているため、これを継続させるのであれば、1/4(母父もしくは二代母)に明確な異系血脈を差し込むのがマスト。Northern Dancer血脈についても同様で、濃過ぎない方がベター。ダート黄金三角形の最後のピースであるRobertoとの配合はニックスだろう。
その他
以下、△ダノンスマッシュ・△ダノンプレミアム・△マテラスカイ・△ミスチヴィアスアレックスまで。ダノン2騎は血統登録頭数も多く、適性面でもチャンス充分。特にプレミアムは、自身の早熟性が伝われば上位進出も狙えるだろう。外車勢はJRAではどうかも、NARの新種牡馬リーディング候補。特にマテラスカイはかなり期待しており、ダート短距離を中心に高いアベレージが狙える血統と見る。 打点の高さはともかく、バリエーションに富んだ中々面白い世代。