始めに
この記事では、血統研究家としての視点からGⅠレースの予想を公開する。血統予想家を名乗るつもりは毛頭ないが、それでも予想を公開するのは偏に自身の血統論の正しさを証明するためである。馬券は本命馬の複勝一点。馬券上手ではないので、敢えて私の本命馬を避ければおいしい馬券にありつける…かもしれない。
レース概要
東京芝2400㍍で行われる、秋古馬三冠第二戦。正面直線坂を登り切った地点からのスタート。全体に緩やかなカーブを1周し、525.9㍍の長い直線を迎えるコースレイアウト。
日本競馬の頂点を決定するコースであり、スピードは勿論、総合力の高さが求められる。圧倒的に内枠(1,2枠)有利な条件で、その意味では『最も運の良い馬』が勝つコースと言えるかもしれない。
前週にCコースに替わり、内の傷みはある程度カバー。週末にかけては晴れ予報が続き、良好な馬場状態での開催が予想される。


前哨戦考察
京都大賞典(阪神芝2400㍍)
レースラップ
12.7-11.9-12.6-12.5–11.9–11.5–11.5–11.8–11.7–11.6–11.8-13.0(2.24.5)
出走登録馬成績
1着マカヒキ(9人気)、2着アリストテレス(1人気)、3着キセキ(4人気)、5着ロードマイウェイ(12人気)、11着ムイトオブリガード(13人気)、13着モズベッロ(6人気)
所見
晴れの良馬場での開催。好ダッシュを決めたベレヌスがスローに落とし、前半1000㍍1.06.6。後半は一転引き締まったラップが続き、前後半差+1.7のスローながら字面以上にタフな流れになった。結果はGⅠを使い続けてきた実績馬のワンツースリー。本番で通用するかはともかく、このメンバーでの単純な地力勝負になった印象。
天皇賞(秋)(東京芝2000㍍)
レースラップ
12.8-11.5–11.9–12.0–12.3–12.0–11.8–11.1–11.1–11.4(1.57.9)
出走登録馬成績
2着コントレイル(1人気)、4着サンレイポケット(10人気)、9着ユーキャンスマイル(12人気)、10着ムイトオブリガード(16人気)、12着カレンブーケドール(4人気)、13着モズベッロ(9人気)
所見
雨の良馬場での開催。逃げ馬不在の中、カイザーミノルの注文をつけた逃げで前半1000㍍1.00.5。前後半差+3.1の、中弛み→11秒前半が並ぶ上がり3F勝負となった。結果的には抜けた3強の決着だが、道中からケチの付け所のない立ち回りを披露したエフフォーリアの完勝。コントレイルは二の脚つかず後方からの競馬。勝ち馬徹底マークで運び、上がり最速33.0の勝ちパターンながら、最後伸びあぐねた辺りは距離適性・ペース適性の差が出たか。サンレイポケットは3強には及ばなかったものの、Hyperionの塊らしく大器晩成の充実度を示した4着。
注目馬血統解説
コントレイル
二代母Folkloreは米GⅠメイトロンS(D7F)、米GⅠBCジュヴェナイルフィリーズ(D8.5F)制覇。ディープインパクト×Unbridled’s Song、ディープインパクト×Tiznow、ディープインパクト×Storm Catと3つの黄金配合を併せ持ち、ディープインパクトのしなやかさを極限まで高めた本格派短め中距離馬。
シャフリヤール
母ドバイマジェスティは米GⅠBCフィリー&メアスプリント(D7F)など重賞4勝。全兄アルアイン。ディープインパクト×A.P.Indyは勝馬率74.6%(44頭/59頭)。「らしくないディープ産駒」だった兄と異なり、非力ながらしなやかさの目立つ上がり特化型中距離馬。スローペースの高速馬場で最も輝く。
オーソリティ
シーザリオ牝系。母ロザリンドはエピファネイアの全妹。オルフェーヴル×シンボリクリスエス×Sadler’s Wells= Fairy Kingは勝馬率100.0%(5頭/5頭)。代々中距離馬を掛け続けた、晩成の本格派長め中距離馬。シーザリオ牝系特有の揉まれ弱さを持つので外枠でスムーズな競馬をしたい。
ユーバーレーベン
二代母マイネヌーヴェルはフラワーC制覇。半兄マイネルファンロン。ゴールドシップ×ロージズインメイは勝馬率60.0%(6頭/10頭)。中距離×中距離の配合による持続力型長め中距離馬。時計に限界のあるタイプなので、道悪などタフな馬場コンディション希望。
カレンブーケドール
母ソラリアは智ダービー(T12F)などGⅠ3勝、年度代表馬にも選出された女傑。ディープインパクト×Storm Catはコントレイル・ラヴズオンリーユー等と共通し、勝馬率65.9%(120頭/182頭)。母のHawaii5×5が強く発現し、この配合ながらキレで勝負するタイプではない。反面どんな条件でも相手なりにしぶとく粘る持続力型中距離馬。
結論
「皐月賞は最も『速い馬』が勝つ」「ダービーは最も『運の良い馬』が勝つ」「菊花賞は最も『強い馬』が勝つ」。これは牡馬三冠競走に於いてしばしば取り沙汰される格言だが、秋古馬三冠競走に於いても通じるところがあるのではないかと考える。
天皇賞(秋)血統予想2021-Hyperion最強
秋古馬三冠第二戦のジャパンCは、牡馬三冠第二戦の東京優駿と同じく『運の良い馬』であることが求められるレース。東京芝2400㍍というコース自体の傾向として、内枠が断然有利なのは周知の事実。下に示すのは、過去5年東京芝2400㍍で施行されたGⅠの枠順別成績。一目見て分かる通り、特に1枠有利が顕著。コース替わりで状態の良い内のポジションを如何にして確保するかが最重要であり、実力が拮抗しているのであれば、最も内を引いた『運の良い馬』を狙いたい。
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
1枠 | 4- 5- 2-14/25 | 16.00% | 36.00% | 44.00% |
2枠 | 2- 1- 2-21/26 | 7.70% | 11.50% | 19.20% |
3枠 | 2- 0- 2-24/28 | 7.10% | 7.10% | 14.30% |
4枠 | 0- 3- 3-22/28 | 0.00% | 10.70% | 21.40% |
5枠 | 2- 2- 0-24/28 | 7.10% | 14.30% | 14.30% |
6枠 | 1- 2- 1-24/28 | 3.60% | 10.70% | 14.30% |
7枠 | 2- 0- 2-33/37 | 5.40% | 5.40% | 10.80% |
8枠 | 1- 1- 2-35/39 | 2.60% | 5.10% | 10.30% |
今回のメンバーの単純な地力比較で言えば、コントレイルとシャフリヤールの人気2頭が頭一つ抜けて拮抗。2頭は東京1800-2000㍍ベストの中距離馬なので、舞台適性からオーソリティ、アリストテレス、サンレイポケット辺りも善戦の余地がある。ただし、今回は天皇賞(秋)と同じく、確固たる逃げ馬不在。キセキが好スタートから19年の再現をしない限りはスローからの直線末脚比べ濃厚で、距離適性の差が結果に直結するとは思えない。
◎コントレイルとする。元々新馬戦から高く評価してきた馬で、中山内回りのホープフルS・皐月賞で対抗評価に下げた(両レース◎ヴェルトライゼンデ)以外はずっと本命を打ち続けている。古馬になって配合通りの米国的高速マイラーに寄りつつあったが、秋二戦での引退表明後、意図的に中長距離を目標として仕上げてきた。分かりやすいのは馬体重で、大阪杯で472㌔(+16)まで増やしたところ、前走天皇賞(秋)では464㌔(-8)。今回も前走と同じく調教後馬体重468㌔(水曜時点)で、ここを目標とした究極仕上げで臨めそうだ。前走は1枠1番が仇となり、行き脚つかずポジションを大きく下げる形となってしまった。今回は最内の後入れ偶数枠となる1枠2番。矢作師が「神様に気に入られた馬なんだな」とコメントしたように、考えうる限り最高の枠順を引き当てた。
無敗三冠達成以降勝ち星を挙げられていないこと、現4歳世代の実績が他世代に劣ることは覆せない事実である。それでも私は、新馬戦・東スポ杯・東京優駿で見せたあの末脚を、ホープフルS・皐月賞・菊花賞で見せた適性を覆すあの圧倒的な素質を、最後まで信じたい。