シルクHC2023年度募集馬分析 プリモシーンの22

募集馬情報

父:エピファネイア 母父:ディープインパクト

生年月日:2022年03月12日 生産:ノーザンファーム

所属厩舎:木村哲也(美浦) 募集総額:1億2,000万円(一口240,000円)

父エピファネイアについて

世代評価

 22年産駒は6世代目産駒にあたる。5世代目産駒(21年産)は、初年度産駒の活躍を受けてセオリー通り繁殖質が上昇……しそうなものだったが、NFに関しては生産馬がそこまで揮わなかったこともあってかイマイチ上がり切らず。一方この6世代目の種付は、前年秋に生産馬アリストテレスが菊花賞2着・オーソクレースがホープフルS2着と健闘、年明けにはアリストテレス・エフフォーリアが立て続けに重賞制覇した直後(21年2月~)というタイミング。種付料も1,000万円の大台に乗り、一気に最上級の好待遇を受けた世代となっている。エフフォーリア以降大物が途絶え、人気が下降の一途を辿るエピファネイア産駒だが、この世代で再評価される可能性は非常に高い。

母プリモシーンについて

競走実績

 通算成績19戦4勝。2歳10月の未勝利戦を勝ち上がると、年明け初戦のG3-フェアリーSで重賞初制覇。春G1は桜花賞10着・NHKマイルC5着と進路取りに手間取る不完全燃焼な競馬が続いたが、続くG3-関屋記念では軽斤量を味方に重賞2勝目を挙げる。4歳時は勝ち星こそ挙げられなかったものの、G1-ヴィクトリアマイルではレコード勝利のノームコアにタイム差なしの2着と健闘。5歳時にはG3-東京新聞杯で重賞3勝目を挙げた。極端な脚質と揉まれ弱い気性が噛み合わず、G1タイトルには最後まで手が届かなかったが、直線大外に持ち出した際の末脚には目を見張るものがあり、ポテンシャルは間違いなく一級品だった。

血統・配合

 母モシーンはG1-VRCオークスなどG1競走4勝を含む重賞6勝。2歳限定競走として世界最高賞金額を誇るG1-ゴールデンスリッパーSでも2着とし、1000~2500mの幅広いレンジで結果を残した豪の名牝。「ディープインパクト×Danehill」はダノンプレミアム・ミッキーアイルなどと共通。このパターンの活躍馬はほぼ例外なくマイル近辺を適距離としており、ディープインパクト産駒の弱点である後躯の非力さを補う配合型と言える。その他の部分ではSir Ivor5×(6×7)~Sir Gaylord6×(7×8×8)など『Nasrullah×Princequillo血脈』の軽さが前面に押し出されているが、遡れば歴史的名繁殖Seleneに辿り着く名牝系出身(因みに母はAll Moonshine8×(7×7))であり、Feola7×(9×9)・Red Sunset7×9など父のスタミナ源にも触れている点が好印象。「3/4ND・1/4異系」「父長距離×母マイラー」でバランスも良く、ディープインパクト産駒の教科書的配合である。

繁殖実績

 22年産駒は母7歳時の初仔にあたる。

本馬プリモシーンの22について

ニックス

 「エピファネイア×母父ディープインパクト」はアリストテレス・オーソクレースと共通。NF生産父産駒の中では現時点で最も多い配合パターンだが、勝馬率は産駒全体を下回るなど、基本的にはあまり推奨できる配合ではない。ただし、残る1/4(二代母)にNorthern Dancer×Special血脈(Nureyev≒Sadler’s Wells)を持つ馬に限定すると、成績が急上昇。特に牡馬に関しては、前述の2頭にエピファニー(JRA4勝)を加えた該当出走馬全3頭がOPクラスという超ハイアベレージを誇る。「父長距離×母父長距離」でバランスの悪い配合型を、Sadler’s Wells(≒Nureyev)クロスで引き締めているのが成功の要因と考えられる。

アウトライン・総評

 サンデーサイレンス4×3・Sadler’s Wells≒Nureyev4×5・Habitat5×8・Nijinsky6×6など、血統表の殆どがTurn-to血脈とNorthern Dancer血脈で埋め尽くされた『父母相似配合』。この配合パターンの狙いは「再生産」であるため、父母共に優れた競走能力を有していたことは本馬の成功の根拠となり得る。「3/4ND・1/4異系」・「父長距離×母マイラー」のアウトラインも良く、父産駒の好配合パターンと合致。水準以上の馬体重に対して後躯の力感がやや心許ない点は、Nasrullah×Princequillo血脈屈指のしなやかさ≒非力さを持つHabitatのクロスが発現しているものと思われる。急坂中山での活躍には期待し難いが、逆に新潟・東京などの平坦(に近い)大箱コースへの適性は高い。勿論、成長に伴いDanehillが主張して弱点が解消する可能性も残している。

 預託予定の木村師は美浦の若手エース。NF系列クラブからの信頼も厚く、特にシルクHCとは年度代表馬イクイノックスなど重賞馬5頭輩出・出走勝馬率68.8%(22/32)と抜群の好相性。母を管理していた縁も大きいが、クラブ側が本馬に掛ける期待度も推して知るべし、だろう。

 父母の適性を考えると、3歳春の東京中距離戦がベスト条件。王道路線ど真ん中を歩むに相応しい血統構成・陣営で、狙いは当然クラシックの頂点。アーモンドアイの22に便乗した攻め気配強めの募集総額だが、回収の目処は充分立つと考え、本馬を推奨一番手とする。

 余談:雑感でも触れたが本馬とロードカナロアとの組み合わせでは、「エピファネイア×キングカメハメハ」「シンボリクリスエス×Storm Cat」「Royal Academy≒Storm Cat」という妙味ある配合が成立する。自身が偏った血統構成であるため、種馬となった際に「遊び」が大きい≒使い勝手が良いのも本馬の魅力の一つだ。簡単なことではないが、この妄想が現実になることを切に願う。

追記:ツアー雑感

 既に馬体重470㎏後半まで成長しているようで、写真・動画のイメージ以上にフレームが大きい。脚元も崩れなく、故障の心配はいらないだろう。トモは北米的「割れている」筋肉ではないが、欧州的「詰まっている」筋肉を感じられ、成長の余地は残しつつもSadler’s Wells≒Nureyevが既に表現されているように思える。引手スタッフ曰く「距離は2000mまで」とのこと。配合通り丁度父母を足して2で割ったイメージであり、『東京優駿は2000mベストの馬が優勝する』論者としては好感。父産駒らしく敏感なところはありそうだが、そこさえ御することが出来れば。

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