自称血統研究家が2023ホープフルSと2歳牡馬番付を考える

出走馬勝ち上がり時評価

【評価基準】

 A:重賞級 B:OP級 C:高確率で期間内+1勝が狙える

 D:期間内+1勝が狙える E:期間内+1勝は厳しい

馬名該当レース評価
レガレイラ07/09 新馬戦 (函館芝1800m)A
シンエンペラー11/04 新馬戦 (東京芝1800m)A
ヴェロキラプトル06/24 新馬戦 (東京芝1800m)C
ショウナンラプンタ09/24 新馬戦 (阪神芝2000m)C
タリフライン10/07 新馬戦 (東京芝1800m)C
ゴンバデカーブース06/10 新馬戦 (東京芝1600m)D
ホルトバージ07/30 未勝利 (新潟芝1800m)D
ミスタージーティー11/05 新馬戦 (京都芝2000m)D
ウインマクシマム12/03 未勝利 (中山芝2000m)D
シリウスコルト07/01 新馬戦 (福島芝1200m)E
ロジルーラー07/16 未勝利 (福島芝1800m)E
センチュリボンド09/03 未勝利 (札幌芝2000m)E
ディスペランツァ09/18 未勝利 (阪神芝2000m)E
カフェグランデ09/23 未勝利 (中山芝1600m)E
インザモーメント10/21 未勝利 (京都1800m)E
サンライズアース10/22 新馬戦 (京都芝2000m)E
ニューステソーロ10/29 未勝利 (東京芝2000m)E
アドミラルシップ11/12 新馬戦 (京都芝2000m)E

※2歳芝新馬戦・未勝利戦のみ

考察

 今年の2歳牡馬番付は以下の通り。掲載馬の多くについてこれまでの記事で触れてこなかったため、改めて各馬の評価を書いておく。

横綱シンエンペラー
大関ダノンエアズロック
関脇アーバンシック
小結ゴンバデカーブース
前頭ジャンタルマンタル
前頭ショーマンフリート
前頭トロヴァトーレ

 横綱は今回の◎⑥シンエンペラーとする。以下、過去記事引用。

11/04 新馬戦(東京芝1800m/良) 1:48.1

 49.4-12.3-46.4のどスロー。好スタートから控えてインの3番手追走。ラスト2F地点で前2頭の間を割ると、鋭い末脚で3馬身差の完勝。レース上がり1F11.0以下は同格同距離で過去24R確認できるが、その中で全体時計1:48.1はソールオリエンス・ラヴズオンリーユーなどを抑えて歴代1位。上位3Rが今年の東京開催から出ているため馬場の恩恵は否定できないが、それにしても圧倒的に早い。また、抜け出してからの上がり2Fを11.1-11.0という鬼の加速ラップでまとめている点も秀逸。挙動に幼さを残す現状でこの数字を出しているのは、高いポテンシャルの現れに他ならない。

 母Starlet’s Sisterは、Sistercharlie(G1-BCフィリー&メアターフなどG1・7勝)やSottsass(G1-凱旋門賞などG1・3勝)、My Sister Nat(G3-ワヤSなど重賞3勝)を産んだ超名繁殖。母系に入って良さを伝えるMiswakiを3×3で持っている点や、Acripolis=Alycidon6×6という妙味ある全兄弟クロスが産駒の活躍を支えている。本馬はSottsassの全弟で、Galileo×Danehillの黄金配合を逆にした配合形に、Nureyev≒Sadler’s Wells4×3をプラス。仏血脈特有のスローで鋭敏にキレる末脚は、距離延長で更にパフォーマンスを上げそうだ。

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 現時点で英ダービー遠征もプランに上がっており、本邦のクラシックに出走してこない可能性もあるのだが、この世代で一番の評価は揺るがない。他の実績組と比較して、多頭数かつ厳しい位置取りからの競馬を既に経験している点は大きなアドバンテージ。今回は適舞台とは言えないものの、何としてもハナをというタイプがいないため、そこまで速い流れにならなさそうなのは追い風か。仏血脈らしく脚を溜めることさえできれば終いの脚は確実、ここは器の違いで圧倒したい。

 大関はダノンエアズロックとする。新馬戦のC評価は血統で下駄を履かせたところが大きく、時計・内容的には水準程度。ところが2戦目のアイビーSは一転して素晴らしく、前半どスローだったとはいえ、レース上がり5F57.7・1F11.0、自身上がり3F32.7という圧巻の数字を叩き出した。アイビーS優勝馬の傾向として、上がり時計とその後の成績に相関関係が見られており、これに沿って考えれば本馬の未来は明るいだろう。母モシーンはG1-VRCオークス(AUS)などG1競走4勝を含む重賞6勝、半姉プリモシーンはG3-東京新聞杯など重賞3勝。「モーリス×Danehill」は豪州でHitotsu・Mazuなどを出すニックスだが、本邦に於いては寧ろアンチニックスとなっていた。しかし現2歳世代からは本馬やダノンマッキンリーなど、この配合から大物が続出。潮目が変わったと見るべきかもしれない。Sadler’s Wells≒Nureyev4×4など底支えも充分で、操縦性が高く弱点の少ないタイプ。適舞台を測りかねるところはあるが、格は世代最上位とみた。

 関脇はアーバンシックとする。新馬戦は鞍上から「追切から扶助が効かず、言うことを一切聞かない。馬の能力だけで勝った」とのコメントが出るほど粗削りな競馬だったが、洋芝1800mに於ける上がり3F34.2での勝利は歴代上位の記録。B評価以上を与えても良かったが、精神面を不安視してC評価に止めた。2戦目の百日草特別ではスタート不利を受け最後方からの競馬になるも、3~4角からジワっと進出し直線大外一気、上がり33.2の末脚で豪快に差し切った。ラップ構成も高く評価できるが、何よりも精神面の成長が見られたことが収穫。後述のレガレイラとは同血(同父・母が全姉妹)の関係にあたり、配合も優れている。ナタ斬れの末脚は府中の中距離戦と相性抜群で、東京優駿に横綱不在となった場合、本馬が一躍主役候補に躍り出る。

 小結は今回の◯①ゴンバデカーブースとする。以下、過去記事引用。

 開幕週、高速時計の良馬場開催。46.9-46.5のミドルと、この時期の2歳重賞としてはそこそこ流れた印象。単に地力上位馬が後方に構えただけともとれるが、力の無い先行勢にこのペースは苦しく、前潰れの差し決着となった。

 勝ち馬ゴンバデカーブースは、逃げた初戦と打って変わって後方からの競馬。1頭馬群から離れた位置で進めると、直線入口でロスなく外に持ち出し、2馬身突き抜けて快勝。55.9-33.5のラップは、過去同重賞優勝後にG1を制した馬と比較しても遜色ない。好内容での勝利と言ってよいだろう。

 母アッフィラート(G3-中山牝馬S 3着)や、近親アクションスター(G3-京成杯 2着)など、堅実ながら本邦では重賞タイトルに中々手が届かない牝系であり、新馬戦も並程度のD評価。それらを覆し、初戦から大きくパフォーマンスを上げての重賞制覇ということで、父ブリックスアンドモルタルの種牡馬ポテンシャルを示す結果となった。新種牡馬考察でも書いたが、Vaguely Nobleを引くことから馬群を嫌う気性の産駒が多いため、逃げられないのであれば外差し、という大味な競馬での2連勝はそれらしい。配合に関しては、Northern Dancer血脈の行き詰まり状態が気になるものの、「父中距離×母父長距離」に対して二代母レディオブヴェニス(G2-キャッシュコールマイルS 他)でバランスを取っている点はセオリー通りと言える。「ブリックスアンドモルタル(Storm Cat)×ディープインパクト」は黄金配合の再現となるが、本馬を含む5頭が出走し、本馬以外の4頭はいずれも馬券内なしと苦戦傾向。果たしてブリックスはディープ肌を救えるだろうか(個人的には「ディープインパクト×Giant’s Causeway」に良い印象がなく、あまり期待している訳ではないが……)。

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 前走は上がり33.5のキレる末脚で新味を出したが、父母の実績や血統構成を考える限り、トップスピードの上限で勝負するタイプではないように見える。小回り中山に替わることで、Halo・Robertoクロスの機動力がより活きてくるのでは。やや詰まり気味の体型で、最終的にはマイルが主戦場になりそうだが、2000mはギリギリこなせる範囲だろう。これまで少頭数マイルの極端な競馬しか経験していないため、今回は初めての多頭数と距離延長、そして最内枠に対応できるかが鍵となる。結果次第では皐月賞の有力候補にも。

 前頭には、実績を認めてジャンタルマンタル、現状順調さを欠くものの、新馬戦の内容が秀逸且つ距離延長でより輝きそうなショーマンフリート、数字面でやや物足りないが、派手な連勝で底知れぬ魅力のトロヴァトーレを挙げる。

 予想に戻って▲⑬レガレイラ。早期段階から阪神JFではなく混合戦のコチラを狙っており、陣営が距離適性を強く意識していることが伝わる。以下、過去記事引用。

07/09 新馬戦(函館芝1800m/良) 1:49.8

 50.1-12.4-47.3のどスロー。出負け気味のスタートから急かさず中団外目。直線も外目から促すと、1頭全く違う脚色で2着セットアップを1馬身半差し切り勝利。レース上がり5F59.7は同条件歴代4位。自身上がり3F34.3は洋芝同条件歴代10位タイ、函館同条件では歴代1位。例年と比較して低レベルと言い続けてきた今年の函館組の中で、明らかに突出した時計を叩き出している。

 ウインドインハーヘア牝系。二代母ランズエッジはディープインパクト(G1-東京優駿 他)・ブラックタイド(G2-スプリングS)の半妹。母ロカはG3-クイーンS 3着など。本馬はドゥラドーレス(G3-毎日杯 3着)の半妹にあたる。父スワーヴリチャードは下馬評通り、ないしはそれ以上に仕上がりが早く、現在JRA新種牡馬リーディングトップを快走中。「ハーツクライ×Danehill」のニックスだが、どちらかと言えば「ディープインパクト(サンデーサイレンス×ウインドインハーヘア)×Unbridled’s Song」が発現しているように見える。マイル戦への対応も可能だが、本質は中距離型で優駿牝馬が狙いどころか。

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 前走は思いの他弾け切らなかった感が強いが、新馬戦で見せたパフォーマンスは間違いなく本物。粒揃いの牝馬番付で小結評価を与えた本馬には、今回に限らずどこかで結果を出してもらいたい。以下、△②ヴェロキラプトル、△⑨タリフライン、△⑪ショウナンラプンタまで。

回顧

 開催終盤ながら内が生きた状態の良馬場開催。前2頭が思いの外やり合い、前走出遅れのショウナンラプンタが抑えきれず後ろから突いた結果、60.0-60.2のミドルペース。

 ▲レガレイラはやや出遅れから後方追走。3,4角からじわじわ進出し、直線を向いてから大外に持ち出すと、上がり最速の末脚で突き抜けた。4角時点で下手に大外を回さず、ウインマクシマムやショウナンラプンタの動向を待てる鞍上の判断力もさることながら、直線だけで差し切る辺りは能力の絶対値の高さ。前半流れたとはいえレースレコード更新の勝ち時計2:00.2も見事で、朝日杯FS回顧でも触れたが、この世代の牝馬は本当に層が厚い。陣営コメントから春一冠目は桜花賞ではなく皐月賞を狙うようだが、当然そこでも有力な逸材だろう。ただし、本質的な適性はやはり大箱東京にあると思う。

 ◎シンエンペラーは好スタートから内目4,5番手追走。やや行きたがる素振りは見せるものの、3,4角で手応え充分にポジションを上げ、直線早々に抜け出した。「これは楽勝か」と思ったのも束の間、ハナに立った途端にソラを使い、ゴール間際強引に勝ち馬と併せにいったものの凌ぎ切れず2着。勝ち上がり診断でも述べたようにまだまだ挙動に幼さが残り、今回は勿体ない競馬に終わってしまった。とはいえラップ構成と競馬振りを見る限り、寧ろここまで接戦に持ち込めたことが不思議なくらいで、横綱評価は間違っていなかったと思う。日本に限らずどの国のクラシックに出しても恥ずかしくない器であり、早い話だが来年の凱旋門賞が非常に楽しみになった。Starlet’s Sisterは偉大。

 〇ゴンバデカーブースは感冒により無念の直前出走取消。仕方ないことではあるが、今回が試金石と思っていただけに、今後の狙い方が難しくなった印象は残る。地力は間違いなく高いので、今後の動向を見守りたい。

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